2013年8月9日(金) 第188号『大学自然探訪その6』

記録的な猛暑が続いている。

今朝、全国ネットで宮崎の猛暑が紹介されており、その中で農業や

酪農に大きな影響が出始めていると報じていた。

 

酪農家は猛暑対策として、スプリンクラー、扇風機、ミスト噴霧を

設置・稼働させているようだが、なかなか効果が出ないという。

 

宮崎市のフェニックス自然動物園のニホンカモシカには、なんと専

用のクーラーがあてがわれていた。

飼育する方もされる方も、この猛暑には参っていることだろう。

 

 

そんな我々の不安をよそに、猛暑をさらに熱く盛り上げようと必死

になっている彼奴らに本日はスポットをあてたい。

 

彼奴らとはだれか、それは「セミ」である。

 

前回の花金の冒頭、学務課のヒライ氏が、セミの抜け殻について触

れていたことが、彼らを取り上げるきっかけとなったことはいうま

でもない。

 

(セミに関する先行研究)

セミに関しては、すでに多くの研究者においてその生態が解明され

ている。

 

たとえば、「種類によって鳴く時間が異なること」や、「捕食回避戦

略の違い」などがその代表的な例といえよう。

 

種類によって鳴く時間が異なることについては、2年前にも花金の

中で触れさせていただいたが、クマゼミとアブラゼミが共存してい

る地域ではクマゼミは午前11時付近まで鳴き、それ以降にアブラゼ

ミが鳴きはじめる「鳴き分け」という現象が確認されている。

 

また、捕食回避戦略の違いについては、アブラゼミが捕食者(特に

野鳥)から逃げる際には、近くの樹木に隠れる習性があるのに対し、

クマゼミは木には隠れず遠くへ飛んで逃げるといった現象が確認さ

れている。

 

(今回の検証内容)

さて、生態の解明が進んでいる彼らをどのような角度から検証する

か…

筆者が悩んでいると、ちょうど本学の研究者が提出してきた書類の

中に、「新婚旅行ブーム」という文字を発見した。

 

「セミの中でもブームというのがあるものだろうか…」

 

そんな疑問が浮かび上がったため、キャンパス内においてセミの

「脱皮ブーム」が起こっているのはどこか、検証を行うこととした。

なぜ「脱皮」を選んだのかというと、抜け殻を数えるのは、成虫を

数えるより圧倒的に容易であるからだ。

 

 

(検証の方法)

検証方法は、キャンパス内の任意の樹木に付着しているセミの抜け

殻の数を目視で確認し、その数の多寡によりブームが起こっている

地点を割り出すという、いたって単純な方法である。

 

なお、この検証結果は、検証方法やデータ収集等の正確性が非常に

低く、質を保証することができないということを、あらかじめお断

りしておく。

 

 

まず次の図の通りAからDの調査地点を設けた。

調査地における特徴は以下の通りである。

A:ケヤキをメインに8本ほどの樹木が密集している。(密集度:高)

B:クスをメインに、ある程度の間隔をあけて樹木が立ち並ぶ。(密集度:中)

C:サクラをメインに、ある程度の間隔をあけて樹木が立ち並ぶ。(密集度:中)

D:センダンやキンモクセイなど、様々な樹木が立ち並ぶ。(密集度:低)

 

(検証の結果)

各地点において調査した樹木の種類及び抜け殻の数については以

下の通りである。

(任意に4本の樹木を選択し、目視にて個数を数えた。)

A:ケヤキ①:36個

ケヤキ②:29個

ケヤキ③:10個

クス:5個

B:イチョウ:14個

クス①:2個

クス②:0個

ツバキ:0個

C:ケヤキ:15個

サクラ①:6個

サクラ②:5個

センダン:0個

D:キンモクセイ①:4個

キンモクセイ②:3個

ツバキ:0個

センダン:0個

 

A地点のケヤキ①やケヤキ②については、抜け殻の数が非常に多く、

写真のとおり非常に密集している部分があった。

【ケヤキ①】

 

【ケヤキ②】

 

次に、各地点における抜け殻の個数の平均値は以下の通りとなった。

A:20個

B:4個

C:6.5個

D:1.75個

 

 

(結論)

以上の調査結果より、A地点のみ非常に高い数値となり、本学にお

けるセミの「脱皮ブーム」はA地点で起こっている(起こった)の

ではないかと推測することができる。

 

なお、実際はブームなどではなく、様々な生態的要因が絡み合った

うえでこのような結果が生じているのであろうが、人間のように、

セミにもブームがあるとしたら、今以上に親近感がわく存在となる

であろう。

 

なお、今回の調査にて抜け殻を数える際に、イチョウだけは、幹

ではなく葉にしか抜け殻がなかったことや、成虫がたくさん集ま

っているセンダンの木には1つも抜け殻なかったことなど、気に

なる部分がいくつか発見できた。

 

いつの日か、また機会があったら詳しく調査してみようと目論ん

でいる。

 

(終わりに)

これからもしばらくは暑い日が続くと思われるが、この季節こそ

セミの成虫にとっては最も輝ける時であり、また命を燃やしつく

す最後の時でもある。

 

セミの鳴き声が「うるさい」と思うこともあろうが、必死に鳴き

続けるセミたちに、是非ともエールを送っていただきたいものだ。

 

(おまけ)

調査中に撮影したセミたちの様子である。

筆者はどちらかというと、たくましいフォルムのクマゼミが好み

である。

みなさんはいかがだろうか。