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教育研究

川瀬和也助教(専門:哲学)が博士号を取得しました!

2018年04月17日

 宮崎公立大学人文学部の川瀬和也助教が、東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻にて、「ヘーゲル『大論理学』「概念論」の研究」の研究成果が認められ、博士号(文学)を取得しました。このことについて、川瀬助教にインタビューを行いました。

001.jpg―まずは博士号取得、おめでとうございます。

 ありがとうございます。

 

―研究テーマとその概要について、お教えください。

 ドイツの哲学者、ヘーゲル(G. W. F. Hegel, 1770-1831)の哲学について研究しています。ヘーゲルは、「弁証法」や「アウフヘーベン」、また「相互承認」といった言葉で有名な哲学者です。ヘーゲルには、『精神現象学』(1807年)と『大論理学』(1812, 12, 16年)という二つの主著がありますが、私は後者の『大論理学』を主な研究対象としています。 より詳しい研究テーマとしては、いくつかあるのですが一例を挙げると、現代の自然科学を取り巻く哲学的論争について、ヘーゲル哲学から何か有益な示唆を取り出せないかと考えています。 少し哲学史をご存じの方には。ヘーゲルには、「絶対精神」のような神秘的なものを持ち出す非科学的な哲学者というイメージがあるかもしれません。しかし、ヘーゲルの時代は、ニュートン(1642-1727)の影響で現代につながる科学が成立しつつあった時期です。また、「近代科学の父」とも言われるラヴォアジェ(1743-1794))とヘーゲルが生きた時代は重なっており、化学や生物学はまさに成立の途上にありました。このような時代状況は、ヘーゲル論理学にも影響を与えていました。ヘーゲル哲学のこのような側面に光を当てることで、「自然科学でどこまで世界を解き明かせるのか」という、現代的な問題を射程に収めた議論を取り出せるのではないかと考えています。

 

―研究に着手したきっかけを教えてください。

 中学生頃から、哲学に漠然と興味がありました。また、高校生のころは、哲学に関連する内容を扱う科目である倫理のほかに、世界史や化学など、この世界の根本的な成立過程を扱うような勉強や、現代文で筆者の考えを理解して読み解くという作業が好きでした。世界の根本的な構造について問題にするヘーゲル哲学を研究していることや、文章の読解が活動の中心となる哲学研究を行っていることは、当時の関心とつながっているのかなと思います。

 

―研究成果を今後どのように生かしていきたいか、お教えください。

 これまではヘーゲルについての文献研究が中心だったので、ヘーゲルを離れたもっと現代的な話題にも取り組んでみたいです。特に、科学で世界のことはどこまでわかるのか、という問題や、私たち人間の行為と理由、あるいは責任の関係はどうなっているのか、といった問題に興味を持っています。 また、昨年度は、『理想』や『フィルカル』といった、一般の方々に向けて発行されている、哲学・思想に関する雑誌にも複数の論文を掲載して頂きました。とくに『フィルカル』では、大森靖子というミュージシャンに関する論文を書いたことで、普段哲学に触れる機会があまりない方々にも、論文を読んで頂くことができました。このような機会を捉えて、哲学の魅力を広く伝えていくような活動もできればと思います。 宮崎公立大学の授業では、これまでもヘーゲル研究とは関係なく、学生の皆さんが考えを深めやすいような現代的なトピックを扱ってきました。3年目になり、本学に入学する皆さんの関心領域がだんだんわかってきたので、より関心を持って頂けるようなトピックを取り入れて改善していきたいと思います。2018年度は、新たに「美」や「芸術」に関する内容を一部で扱う予定です。

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