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国際シンポジウム『韓国の人類学者が見た日本』が開催されました!!

2009年11月25日

 11月21日に本学交流センター多目的ホールにおいて、李教授(東アジア地域研究)主催、宮崎公立大学後援、財団法人みやざき観光コンベンション協会の協力で、国際シンポジウム『韓国の人類学者が見た日本』が開催されました。韓国からは、ソウル大学校及び慶北大学校の著名な研究者を4名お招きして、大変興味深い講演と活発な質疑応答が交わされました。

 

 

 教員や学生、市民の方々で、会場は満員です。

 

 

 

 

 中別府学長による開会挨拶。挨拶に先立ち、文化人類学の偉大なる巨匠クロードレヴィ=ストロース氏(先月10月30日に逝去 享年100歳)への黙祷が行われました。学長は挨拶の中で、「ルソーの着眼した旅や旅行記によって、また、現地調査を行う人類学者の仕事をつうじて、お互いの類似点と相違点を知ることが、他の人を知り自分を知ることにつながる。そして、そのようにして知ることができた他の人たちと自分たちが、今度は対等の立場で結びつき合わされることによって、人間はいやおうなしに新しい世界に引き上げられる。」という1962年ルソー生誕250年記念祭でのレヴィ=ストロースの言葉に言及し、本シンポジウムが新たな知への機会、そして楽しい学びの機会となることを祈念されました。

 

 

 

 1人目の講演は、ソウル大学人類学科の全京秀教授による「百歳人の研究と長寿人類学」。人間の長寿や老化について理解するために、イタリアのサルデーニャ、スペインのウェスカ、中国のウイグル、日本の沖縄、韓国の済州島など、長寿で知られる地域の住民の生活の10年間に及ぶ調査の結果が、写真のスライドを中心に紹介され、長寿と相関関係が見られる3要素「良いものを食べること」「打ち込める仕事があること」「家族や隣人など、周囲の人間と良好な関係性を構築していること」が示されました。また、西欧の社会福祉モデルをそのままアジア圏に適応することはできない点が指摘され、アジア独自のモデルを構築する必要性、そして地産地消や自給自足の重要性が説かれました。

 

 前述の長寿の秘訣3要素は、宮崎が地方の一都市として活性化していくためのキーワードである「地産地消」「雇用創出、生涯学習」「地域コミュニティーの再生」にピタリと符合することに驚くと同時に、大量に生産される食品が全国に安価で流通し、雇用状況は悪化し、地域社会における人間関係の希薄化が取りざたされる現代日本において、我々の生活は望ましい方向とは真逆に突き進んでいることに、強い危機感をおぼえました。

 

 

 

 2人目の講演は、ソウル大学日本研究所の朴教授による、「下田の開港地風景と唐人お吉」。下田市の「開国の町」の観光イメージとして用いられてきた、ペリー、ハリス、吉田松陰、唐人お吉などの人物やエピソードの中で、「なぜ唐人お吉だけが急に広まり観光の目玉となったのか」という点に着目し、唐人お吉物語の概要と、歴史資料を調査する中で得た仮説が示されました。

 

 すなわち、明治維新という文化の転換期における唐人(外国人に対するネガティブな呼称)というカテゴライズの必然性、そして、悲劇的なお吉にまつわるエピソードが物書きたちの想像力を刺激し、小説だけではなく演劇、詩、映画など様々なメディアで発表された結果、日本人に絶え間無くお吉を連想させ、印象付けたこと、の2点です。

 

 研究対象自体の面白さもさることながら、観光イメージの生成過程の考察や分析の手法は、同じく地域経済において観光の占める割合が高い宮崎県にも援用が可能ではないかと感じました。

 

 

 

 3人目の講演は、慶北大学校考古人類学科の劉教授による、「焼酎コップ越に見た韓日文化の比較」。タイトル通り、大量の統計に基づいて韓国と日本の酒文化の共通点と相違点を抽出し、それらについての文化人類学的な視点で検討した仮説を提示されました。「韓国はつけ出し料理は無料」「目上の人に注がれた酒は一気飲みが基本」「お酒のつぎ足しは失礼にあたる」「目上の人に正面を向いて飲酒するのは失礼」「手酌は厳禁」など、日本と異なる飲酒マナーは、それだけでも聞いていて興味深かったです。また、日本独自の文化として挙げられていた「スナック」は、「初めて店を訪れる見知らぬ人間同士が新しくコミュニティーを形成する場」であるとして、既に形成されているコミュニティーの構成員同士の結束をさらに強めるために飲みに行く韓国人との違いや、スナックにおける「ママ」の役割の冷静な分析がユニークで、自国の文化を新しい視点でとらえるきっかけとなりました。

 

 さらに、韓国で「爆弾酒」の一気飲み文化が広まったのは、韓国の近代化の過程において形成された「平等」「効率」「合理性」「低費用」を志向する風潮に他ならないという指摘は圧巻で、私もお酒という身近な文化についてもっと知ってみたい、という欲求が生じました。

 

 

 

 4人目の講演は、ソウル大学比較文化研究所の陳研究員による、「沖縄米軍基地はなぜ動かないのか――地域の視点」。現在ホットな話題である沖縄米軍基地政策について、日米の国家間交渉という大きな渦の中には表れにくい「基地所在地域住民」の視点から、歴史的・多面的にとらえたという博士論文の概要を説明していただきました。琉球王府の時代から続く村落共同体による独特の土地管理形態、米軍基地としての土地の接収とその対価として村落共同体に支払われた軍用地料、及びその配分など、思いもよらないファクターが続々と提示されます。「結局、基地所在地域の住民たちが跡地利用の方向として選べる選択肢は多くない。地域活性化のため、様々な工夫を重ねるが、その成功率は高くない。また、農業、林業、水産業の付加価値が低いため、開発に反対し現状維持することもけっして簡単なことではない」という結論から、いかに私がこの問題について一面的な知識しか持ち合わせていないかを思い知らされました。

 

 

 

 4人の講演の後、東北大学の嶋教授を総合司会者として、各講演の批評及び質疑応答が行われました。地域住民の方から、「今まで韓国という国はドラマや映画の中だけの世界だったが、今日のシンポジウムに参加して様々な新しい発見があった」などの意見が寄せられました。

 

 

 

 最後に、総合研究大学院大学(国立民族学博物館)の朝倉教授より、閉会挨拶がありました。朝倉教授のお話の中での、「日本と韓国は似ている国である。『似る』という言葉は、『真に』という言葉を加えると『真似(まね)』、『非』を加えると『似非(えせ)』となり、両極端だとよろしくない。似ていることと同じであることは違う。ほどよい程度に似ているからこそ、お互いの違いがよく見えてくる。これこそが日韓交流の意義だ」という言葉が、このシンポジウム自体を象徴していました。

 

 

 

 大きなシンポジウムを裏方で支えてくれた、本学の韓国文化研究会のメンバーです。

 

 

 

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