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卒業生活躍ニュース2 「宮崎と韓国の懸け橋に」山下藍さん

2008年09月04日

卒業生活躍ニュース第2弾は、11期生OG山下藍さん。2008年度大韓民国政府奨学金の選考試験を見事パスし、来年度から韓国の大学院に進学する予定である。

山下さんは宮崎県高千穂町の出身。小・中学校はバレー部で活躍する活発な女の子だった。そんな彼女が朝鮮半島に興味を抱き始めたのが高校時代。テレビから流れてくる北朝鮮の拉致問題や韓国の過激な反日運動のニュースを見て、シンプルな疑問が生じた。「なぜ同じアジアで距離も近い国なのに、日本と朝鮮半島の間にはこれほど壁があるのだろう?」

朝鮮半島について知るためには、韓国語と韓国文化を学ぶ必要がある。明確な目標を持ち、韓国の大学との交換留学が盛んな宮崎公立大学に進学した。さっそく1年生の夏に、韓国人留学生のパートナーを引き受けた。韓国人留学生といろんな場所に出かけ、自宅に泊めて生活を共にする中で、メディアから受けていた韓国人像と実際の韓国人が大きく異なることに気づいた。また同時に、深い話がしたいのに韓国語が通じなくてもどかしく感じた。「もっと深く分かりあいたい」と、大学の講義だけではなく独学でも韓国語の勉強に励んだ。2年生の夏には日常会話には困らないレベルまで上達したという。韓国への短期留学も経験し、実際に韓国という国に触れ、もっと学びたいという気持ちが高まった。

しかし、3年生になった山下さんは韓国文化ゼミではなく、アメリカ文化ゼミに籍を置いた。その理由について、彼女は「真の国際人を目指すなら、アメリカ文化の理解と英語の習得は欠かせないと思ったんです。」と話す。すでにこの時、彼女の脳裏には、国際的な舞台で活躍する自分の姿が映っていたに違いない。

そして4年生になる春、山下さんは満を持して韓国の蔚山大学に留学。1年間に及ぶ韓国での生活の中で、韓国語や韓国文化の学習だけではなく、幅広い人間関係を構築することになる。また、長期間韓国で暮らしていると、メディアで報道されるような反日感情を感じるシーンもいくつかあったという。山下さんの印象に強く残っている出来事がある。

韓国でのある夜、山下さんは韓国人の友人女性と夕食を食べに出かけた。食堂で食事をとっていると、隣の席に若い韓国人男性の2人組が座った。2人はお酒を飲んだあとらしく、少し赤い顔をしていた。2人の男性は山下さんの存在に気づくと、さも忌々しい表情に変わり、韓国語で日本人を侮辱する言葉を吐いてきた。韓国人にしかわからない表現だが、韓国語について深く学習している山下さんには、その言葉が理解できた。

その時、山下さんと一緒に食事をとっていた韓国人女性が猛然と立ち上がり、男性2人に詰め寄った。「彼女に謝りなさい!」相手がひるむほどの語気で、その女性は叫び続けた。「謝れ!」

最終的に、男性2人は山下さんに謝罪した。その男性のうち1人は、戦時中日本兵によって祖父を殺されたという。お酒の勢いもあって、つい口に出した言葉だった。

山下さんの頭の中にはいろんな思いが渦巻いた。
「日本にいる時は意識したことがなかったけど、私は日本という国に属する人間であり、日本という国は過去の歴史において他国を侵略し、たくさんの外国人を殺した。その責任は、どれだけ時間がたっても突きつけられるんだ。」
自分の中に眠る日本人としてのアイデンティティーに、初めて気づいた。
「なぜ同じアジアで距離も近い国なのに、日本と朝鮮半島の間にはこれほど壁があるのだろう?」

高校時代に最初に抱いた疑問だった。文化や言語を学び、韓国を訪れ、壁ができた背景を知り、今その壁を実感している。彼女の答えは1つだった。
「この壁を壊したい。」

私を憎むのは韓国人であり、私のために全力で抗議してくれるのも韓国人だ。今まで出会ってきた、たくさんの韓国人の友人たち。仲良くなりたいという気持ちは、万国共通だ。私たちが仲良くなれたのなら、日本と韓国も仲良くなれるはず。日本と韓国をつなげることに、私の人生をかけよう。

韓国語の勉強を始めた当初、山下さんは外交官や大使を目指していたが、この出来事をきっかけに民間の交流団体を志向するようになる。交流の現場でたくさんの韓国人と触れ合うことが大切だと感じたためだ。

1年間の留学を終え帰国した山下さんは、韓国系アメリカ人作家の小説を題材に卒業論文を執筆。この頃には宮崎県庁から韓国語の通訳を依頼されるほどの会話レベルにまで達していた。

今年の3月に大学を卒業した後は、宮崎市内のカルチャーセンターで韓国語を教えながら留学資金を貯め、留学のチャンスをうかがっていたところ、2008年度大韓民国政府奨学金(大学院)の選考試験に見事合格。この試験には高い韓国語能力は当然ながら英語能力も要求されるため、アメリカ文化ゼミでの努力も実った形だ。

現在は来年度入学する大学院の試験を受験中。韓国屈指の名門校にチャレンジしている。晴れて合格すれば、来年4月から大学院生となる。大学院では韓国文学を専攻し、引き続き韓国語と韓国文化を研究していく予定である。

山下さんは次のように語る。
「日本を飛び出してみて、初めて日本のことがわかった。韓国という相対比較の対象があったからだ。将来は、故郷の宮崎と韓国との交流を促進し、宮崎人と韓国人が仲良くなるきっかけを作るような仕事をしたい。」

誰からも好かれるさっぱりした性格とチャーミングな笑顔、芯の通った強い意志、思ったことは即実行する行動力、旺盛な知的好奇心、2ヶ国語を習得する高い学力と、それを裏付ける確かな努力。様々な武器を持つ彼女は、大学時代に培ったたくさんの知識と経験をトランクに詰め込み、大学院受験のためあわただしく日本を飛び出して行った。彼女が宮崎と韓国の懸け橋になる日は近い。

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