「温暖湿潤気候」の気候区分に属しているとは到底思えない寒さと乾燥が続いた冬がようやく終わり、待ち焦がれた春がちらほら顔を見せつつある昨今、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 3月は大学では授業がない期間なので、学生は課外活動やボランティア、図書館での勉強や旅行と、それぞれに人生の春を謳歌し、教職員は新年度の到来に向けてあわただしく様々な準備に追われています。
今日は学務課学生係のコバヤシが、本学の学生自治組織である「学友会」について少し紹介したいと思います。
「学友会」とは、高校生の皆さんのイメージだと「生徒会」に近いと思いますが、少し異なります。以下は、新学友会長に就任した宮崎君が、役員を公募する際に全学生にメールで呼びかけた際の文章です。
学友会とは、学生のより良い学生生活を作っていくための、学生だけで構成される自治組織です。言わば、「行政・立法能力を備えた小さな小さな国家」です。具体的には、新入生の部活動紹介やスポーツデイ、新入生歓迎会、凌雲祭等を企画運営することが主な仕事ですが、結成されて1年目の若い組織なので、まだまだ活動の幅を広げていく可能性があり、新しい役員とともに活動の方向性を考えていきたいと思い、この度1~2年生全員を対象に広く役員を募集することになりました。今年度は役員7名で運営してきましたが、人手不足であった反省から来年度は10名ほど増員する予定です。
学友会と言っても堅苦しい組織ではなく、誰でも参加可能な楽しい集まりです。そして、何かを新たに「企画」して「運営」するということは、自分の意見や考えを「形にする」ということです。これは、机上で勉強したりアルバイトに従事したりしているだけでは得られない貴重な経験です。「何か新しいことをしてみたい」「充実感のある活動に完全燃焼してみたい」「楽しいイベントを企画してみたい」「予算の策定から執行までに関わりたい」どんな理由でも結構です。(中略)あなたの力を貸してください!!
文中に「結成されて1年目」とあるとおり、本学の学友会は2010年度に発足し、初代学友会会長には本ブログ53号でおなじみの北海道出身の体育会系インテリゲンチャ、堀田君が就任しました。
2010年12月で初代学友会役員の任期が満了し、上記メール文章で2代目学友会役員を広く公募したところ、なんと30人を超える応募があり、学友会総会での承認を経て27人の2011年度学友会役員が誕生しました。
そして本日3月4日の13時、凌雲会館内にある学友会室では、新学友会会長の宮崎君、副会長の品川さん、執行部会計の藤原さん、体育部長の甲斐君、文化部長の西森君、文化部会計の坂上さんが集まり、初顔合わせとミーティングを行いました。
そんな新年度役員たちのキャラクターや活動を、『週刊花の金曜日』では少しずつ紹介していければと思っています。
今回は、学友会の金庫番である会計のお二人に色んなお話をうかがいました。
まずはインタビュー1人目、文化部会計の2年生坂上さん。
コバヤシ 出身はどちらですか?
坂上さん 広島です。
コバヤシ 学友会役員になってみようと考えた理由は何ですか?
坂上さん 複数の人間で何かを作り上げていくということが昔から好きだったし、作り上げていく
過程で、他人の異なる考え方や価値観にぶつかり議論していくことが、必ず将来の
財産になると考えたからです。これまでの2年間も、凌雲祭(本学の大学祭)に
実行委員という形で関わってきているので、就職活動が本格化するまでの残り
1年間を完全燃焼したいと思いました。
コバヤシ では、なぜ「会計」という仕事を選んだのですか?
坂上さん 自分が「会計」的な仕事を苦手だと思っているからです。一度「苦手」「できない」
と自分の中で線引きをしてしまうと、自分の能力が委縮して本当にできなくなって
しまう気がするので。あえて正面からぶつかってみて、苦手意識を払拭したいと
思います。
コバヤシ ストイックなんですね。周囲の友人と普段どんな話をしているのですか?
坂上さん いや、普通に女子大生がするような話をしていますけど(笑) ただ、難しい話をする
先輩をつかまえて、国際情勢や政治哲学などについて議論するのが好きです。
物事を深く考えるうえで、他人の考え方と自分の考え方を相対視することが不可欠
なので、真剣に議論できる場が必要ですし、学友会もそのような場のひとつだと思い
ます。熱く語る人間の集まりですから。
コバヤシ なるほど。ではゼミも国際関係や政治学関係ですか?
坂上さん 田中教授の国際関係論ゼミです。2年生の後期は文献輪読とレジュメ発表の他に、
新聞各紙の国際欄から特定のトピックを集めて論点を集約して発表するという宿題が
毎週課せられました。英字新聞やBBC等の英語メディアに限定される週もあり、国際
関係を読み解く視点や知識だけではなく、日本語や英語の基本的な運用能力も
かなり鍛えられたと思います。もう毎週図書館に缶詰めでしたね。
コバヤシ さすが学生を徹底的に鍛え抜くことで定評がある田中先生。話は変わりますが、
アルバイトはしていますか?
坂上さん バーで働いています。
コバヤシ 何か働いてみてためになったこととかありますか?
坂上さん そうですね。まず、大学の中だけに留まっていては接する機会のない地域の大人と
たくさん出会えたことが、かなり大きな財産になっていると思います。多様な人間の
多様な考え方に触れ、時には自分の思うようにいかないこともある。そしてそれを
乗り越えようと必死に頭を働かせている時こそ、自分は成長していけるのでは
ないかと考えています。また、お客さんの人間関係や雰囲気を敏感に察知しな
ければならないので、接客スキルも磨かれているのではないかと思います。
しっかりした受け答えと知性、強い意志とほとばしる積極性。頼もしすぎる逸材です。
次にインタビュー2人目、執行部会計の2年生藤原さん。
藤原さん かぶったままでいいですか?
コバヤシ お望みであれば。ご出身はどちらですか?
藤原さん 佐賀県です。ゆるキャラの町です。
コバヤシ 執行部会計ということですが、なぜ会計の仕事を?
藤原さん 所属しているフットサル部でも会計を担当していますし、会計を極めてみよう
かなと思いまして。
コバヤシ じゃあ日常生活でもお金の管理はきっちりする方なんですか?
藤原さん そうですね。レシートはすべて取ってありますし、キャンプや飲み会でも会計を
買って出ることが多いです。皆で出し合ったお金をきっちり処理しないと落ち
着かないんです。
コバヤシ 「公金」という概念がすでに基本装備されているわけですね。
藤原さん もともとはフットサルの会計職も知らないうちに任せられていたのですが、やって
みたら自分に向いているなあ、と。
コバヤシ ゼミではどんなことを勉強しているのですか?
藤原さん 広瀬教授の国際法・国際機構ゼミです。2年生の後期では、文献輪読とレジュメ
発表が中心でしたが、発表後のディスカッションの際に「one opinion制(1人が
必ず1つ意見を述べる制度)」を導入することで、活発な議論が交わされていま
した。実は、同学年の学生に対して「少し大人しい」というイメージを持っていた
のですが、ゼミの場で皆が自分の意見を積極的に発言するのを見て、以前の
印象ががらりと変わりましたね。
コバヤシ 広瀬先生といえば、無尽蔵な知識の源泉をお持ちで延々と長時間お話をされること
で有名ですね。
藤原さん そうなんです。私たちもそこに惹かれてゼミに入ったのですが、残念ながらゼミの
時間は有限なので、「タイムキーパー制」を導入し、先生にも時間を意識してお話
していただいてます。
コバヤシ なるほど。ところで、アルバイトでも会計に関わることを?
藤原さん いえ、スーパーのレジとゴルフバーの接客をしています。
コバヤシ 働いてみてどうですか?
藤原さん スーパーやゴルフバーのお客さんの増減から、経済の動きを肌で感じられること
が興味深いです。また、スーパーでのポイントカード導入や商品陳列、接客方法の
改善など、戦略的な取り組みによってお客さんの数が目に見えて増えた時は、
社員さんが自分の頭で物事を考え、分析し、仮説を立てて改善を決断し、実践して
結果を出すことに尊敬の念をおぼえました。
やわらかい物腰と、受容的な雰囲気。一方で高い倫理観とぶれない意思を併せ持つ、こちらも頼もしい逸材。坂上さんと良い意味で好対照、最強の会計コンビの誕生を確信しました。
インタビューが終わってからも、リビア情勢やテロ組織による日本人拉致、大相撲八百長をめぐるメディア報道の在り方、アメリカ主導のネオリベラリズムや自己責任論と自己発信型メディアの台頭との関連性、さらには村上春樹の作品の中ではどれが最高傑作か、など話題は尽きません。なんと熱い勤勉学生であることか。
そして、私はかねてから疑問に思っていた質問を2人にしてみました。
「2人がそこまで物事を深く考えたり議論したりするようになったきっかけって何ですか?」
すると2人から返ってきた答えは、
「堀田先輩に影響を受けたからですね」
さすが初代学友会会長。学友会の熱さの源泉をたどれば彼に行きつくのです。
彼の熱さをこの場で紹介したかったのですが、彼は現在韓国旅行の真最中のため、彼が大学SNS「MMU-net」の中で書いていた日記を以下に紹介します。
2月21日
本当に悔しい。
就職のことなんて一気に頭から吹きとんだ。
その講義はグローバルスタンダードを謳っている講義だ。
僕は今回、去年の反省を生かし、暗記よりも理解することに重点をおきソクラテス、カント、プラグマティズムなど自分なりに理解して試験に臨んだ。
手ごたえはあった。よしかけた! そう思った。
しかし、今日結果を見てがく然とした。「D」。本当にショッキングなアルファベット「D」だ。
ほかの教科は問題なく履修し、来年度は専門演習のみの履修で卒業、とめでたい日だった、はずなのに、現実は「D」なのだ。
この一つの教科の「D」は恐ろしい程僕にショックを与えた。僕のこの講義への思いの入れようは大変なものだった。ほかの講義が「D」でも僕はこんなに落ち込まなかったに違いない。
つまらない、些細な事かもしれない。しかし、一筋の光明はある。再履修することだ。また来年、一限に起きながら講義に参加できるかどうかはわからないが、可能性はある。僕の悔しさはこの点にのみおいてつながっている。
単純に負けたくないのだ。あの講義には負けたくないのだ。僕は負けない。履修するまで。
少し捕捉をすると、この日記で言及されている先生が担当する講義は、単位の取得が難しいことで知られています。そして、そのような難関に対する堀田君の姿勢そのものに、彼の熱さが表れていると言えるでしょう。
堀田君をはじめとする初代学友会が打ち立てた精神的支柱を、しっかり2代目が継承して走り出します。
2代目学友会の今後に乞うご期待!!
以上、学生時代に上述の先生の講義で単位を落としまくった学務課コバヤシがお送りしました。