8月6日金曜日の昼下がり。先刻までの激しいスコールが嘘のように、洗濯された群青が頭上に広がっている。そんな絶好のキャンプ日和に、中国・カナダからの短期研修生と学生パートナー、交換留学生がマイクロバスに乗り込んだ。
目的地は日南市の酒谷キャンプ場。17時前に到着すると、眼前に透き通った酒谷川の清流がさらさらと涼しげな音を立てている。宮崎特有の強い日差しと猛暑に汗だくだった若者たちは、たまらず川の流れに身を任せた。
透き通った青空に茜射す頃、バーベキューの準備が整った。ガスバーナーで炙られ赤みを帯びた炭の上で、牛肉、豚肉、鶏肉、ソーセージ、玉ねぎ、キャベツ、焼きそばが踊る。引率の宮元先生による乾杯の音頭と共に、箸が忙しなく行き交い、そこここで感嘆の声が上がる。大自然の中で肉をいただく感動は、万国共通なのだ。
太陽がすっかり山の向こうへと姿を消し、山独特の厚みのある暗闇がじわじわと風景を塗りつぶしていく。川遊びの空腹をすっかり満たした後は、キャンプの定番①スイカ割り。周囲から「もっと前!」などのヒントを出す場合に母国語は禁止、という特別ルールの制約の中、日本語と中国語が飛び交う。瞬く間にスイカの欠片が量産され、皆で食べつくした。
スイカが割れた後は、キャンプの定番②花火。20歳前後の若者たちも、花火を手にしたとたん子どもの表情に戻る。噴き上げる花火を飛び越える者、両手の花火をグルグル回しながら走り回る者、輪になって線香花火に興じる者。火薬の匂いと目にしみる煙。ほとばしる光の向こうに何を見ていたのかは分からないが、皆一様に優しい表情をしていた。
ここまでがキャンプの通常メニューだったが、今年のキャンプはここからが違う。この日、偶然にも短期研修生1人と交換留学生1人が同時に誕生日を迎えるという情報を、国際交流担当タナベ君が事前に仕入れてきたからだ。「せっかくなので、サプライズでお祝いできないですかね?」というタナベ君の提案をきっかけに、2人でキャンプ前日に作戦を考えた。
スイカ割りの後は入浴タイム。汗をさっぱり流した後は、大部屋に全員で集まり、キャンプの定番③怪談と肝試し。部屋の電気を消して、不肖私コバヤシが宮崎にまつわる怪談を披露。もちろん、アゴの下には懐中電灯。全員に涼しくなってもらったところで、肝試しのクジ引き。実はこのクジ引き用の箱は学生係ヒライさんのお手製で、何やら怖ろしげな幽霊の絵が貼り付けてある。そして箱の中には、誕生日の2人とタナベ君、そしてドッキリの協力者である短期研修生の徐君とパートナーの山口さんのクジだけを入れておいた。偶然を装って選出された誕生日の2人は、異国の幽霊が潜む山中を冒険しなければならない恐怖で心底憂鬱な表情。
肝試し隊の5人を送り出したところで、残りのメンバーに誕生日サプライズの趣旨を説明。中国人も日本人も韓国人も、全員が「いいね!やろう!」と快諾してくれた。こっそり買っておいたバースデーケーキを大部屋に持ち込み、蝋燭をさしてライターで火を灯し、5人の帰りを待つ。暗闇の中ゆらゆら揺らめく蝋燭の明かりは、怪談の雰囲気さながら。そして、5人が肝試しから帰ってきて大部屋の戸を開けた時、「誕生日!」「おめでとーう!!!!!」の祝福。誕生日の2人がポカンとする中、全員でHappy Birthdayを合唱。無事サプライズは成功したのでした。
その後、バスの中で練習したというスピッツ『チェリー』を全員で歌って、午後11時にこの日のプログラムは全て終了。
しかし、エネルギーの塊である若者たちがすんなり寝つけるはずもなく、留学生が知っている日本のJ-POPを皆で歌ったり、互いの国の文化を語り合ったりしながら、終わらない夜がいつまでも続くのだった・・・
以上、学務課コバヤシが慣れないノスタルジック口調でキャンプの模様をお送りしました。『チェリー』の歌詞の「ささやかな喜びを つぶれるほど抱きしめて」という一節が、とてもしっくりくる一夜でした。