2009年9月18日 第9号

 

 南国宮崎も朝晩はめっきり涼しくなり、冷房がいらなくなりました。今年は秋の到来が例年と比べて少し早いように感じます。

 

秋晴れが続いています。
秋晴れが続いています。

 

 

 さて、多くの大学生は、大学生活の半ばで成人式を迎え、晴れて大人の仲間入りを果たします。大人の一員として、自己責任でお酒や煙草をのむことを認められるわけです。今日は宮崎の酒文化についてお話したいと思います。

 

 

 

 宮崎県を代表する酒と言えば、やはり焼酎です。酒税法では「単式蒸留焼酎(焼酎乙類、本格焼酎とも呼ばれる)」と分類されている、芋、米、麦、そばなどの原料の風味を生かした焼酎が人気で、年間の製成数量も鹿児島県に次いで全国2位を誇ります(『データでみる県勢 2009年版』より)。これらの原料の中でも、本学が位置する宮崎県中南部で最もポピュラーなのは芋焼酎です。

 

 

 

 芋焼酎の歴史は、原材料であるさつまいもの日本伝来までさかのぼります。17世紀初頭の江戸時代がはじまるころに、さつまいもは中国福建省あたりから琉球を経て、薩摩や長崎にもたらされたそうです。鹿児島の気候と土壌がさつまいもの栽培に適していることは、皆さんも小・中学校の社会の授業で聞いたことがあるのではないでしょうか。当時の薩摩の人々は、さつまいもが伝わる以前は米や雑穀から作った焼酎を飲んでいましたが、シラス台地に適したさつまいもを栽培して酒を作った方が貴重な米を節約できるということで、薩摩藩が芋焼酎の税金を免除して芋焼酎の製造を奨励した結果、広く作られるようになりました。

 

 

 

 一方で、宮崎県は江戸時代当初4つの藩が分立しており、幕府直轄の天領、薩摩藩、球磨藩(現在の熊本県)などの領地が混在していました。その中でも、薩摩藩だった現在の都城市や小林市、えびの市などの地域や、さつまいも栽培に適していた宮崎県南地域が、宮崎県の芋焼酎の主な生産地となりました。(参考文献:小林昭夫編『改訂新版 鹿児島・宮崎いも焼酎・黒糖焼酎名鑑』金羊社、大本幸子著『いも焼酎の人びと』世界文化社)

 

 

 

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 芋焼酎は不思議な飲み物です。お湯割り、水割り、ロックなどが主な飲み方ですが、どのような料理にもよく合い、悪酔いせず翌日に残りません。しかし、大阪府出身の私が初めて飲んだ時の感想は、「イモくさっ!こんなん飲めるかい!」でした。その時は二度と口にするまいと決心したのですが、宮崎の飲み会では芋焼酎は必ずと言っていいほど出されます。宮崎人と飲み会の買い出しで酒屋を訪れると、まずは買い物かごに芋焼酎のパックを2つほど放り込み、「他に何飲む?」と笑顔で尋ねてきます。

 

 

 

 郷に入れば郷に従えという言葉もありますので、私は宮崎人に合わせてちびちび芋焼酎を飲んでいました。するとある日突然、雷に打たれたように芋焼酎の「イモくささ」が「美味しさ」へと昇華されたのです。それ以来、芋焼酎以外の酒だと何か物足りなくなってしまい、すっかり虜になりました。芋焼酎にはこのような魔力があります。全国的にブームになったこともうなずけます。

 

 

 

 宮崎には「だれやみ」という言葉があります。「だれ(疲れ)」を「やみ(止める)」、つまり、疲れを癒すための晩酌のことです。1日の終わりに家族や友人と過ごす団欒のひと時に焼酎グラスを傾ける、これが宮崎でよく見られる「だれやみ」の風景です。我々チーム花金のメンバーも、月に一度は反省会を開き、仕事の反省や大学の未来について熱く語ります。もちろん宮崎が誇る本格焼酎と共に。

 

 

 

 皆さんも、お酒を嗜む年齢になったら節度を守って「だれやみ」を楽しんでください。

 

 

 

 以上、「お酒が好きか嫌いか」と問われたら「どちらかと言えば好き」と遠慮がちに答えるコバヤシがお送りしました。