皆さんは「ミニバレーボール」をご存じだろうか。
長岡京市ミニバレーボール協会のウェブサイトによると、昭和57年に長岡京市で考案された生涯スポーツ競技であるという。
バドミントンのダブルスコートを使用して、1チーム6人の選手がネットを挟んで相対し、通常のバレーボールより柔らかめのボールをやり取りする。バレーボールの醍醐味であるアタックは禁止で、自陣から敵陣に返球するまでに3回ボールに触れることが許される。
では勝敗が分かれるポイントはどこかというと、「堅実なレシーブ」「ネット際の攻防」の2点だ。「そんなちまちましたスポーツの一体何が楽しいのか」とミニバレー未経験の方はお考えになるかもしれないが、それは短見と言わざるを得ない。この競技、実に奥が深い。
まずレシーブだが、相手コートから飛来するボールを1回で返球しようとすると、腕に余分な力が入ってしまい、狭いバドミントンコートの遥か外側にボールが飛んでいく羽目になる。その時、レシーバーは己の「1回で返球しよう」という意図が、「観客にええとこ見せたい自分」「自陣にボールを留めておくことに対する焦り」「チームメイトへの信頼の欠如」から湧き出ているという事実を突き付けられ、自分のエゴの醜悪さや未熟さに愕然とする。
堅実なレシーブを実現するためには、「エゴの抑制」「緊急事態でも動じない大人の落ち着き」「チームメイトへの果てなき信頼」が求められる。「目立つのは自分でなくともいい、チームのために俺がいる」と自分に言い聞かせ、リラックスして両腕でそっとボールを迎え入れる。両膝をクッションとして球威を殺し、次に打球する仲間のことを想い、彼/彼女がもっとも打ちやすい高さにそっと球を浮かせてあげる。そのような手順と精神性でレシーブに臨むとき、自陣のコートは愛に満ち溢れ、レシーブミスの確率は劇的に減少する。
ネット際の攻防では、前述のようにアタックが禁止されている。よって、ネット際でボールを競り合う前衛選手は、「アタック」「非アタック」の境界線をギリギリまで模索する必要に迫られる。「アタック」「非アタック」を決定するのは審判だが、審判の判断は往々にして敵チームや観客の作り出すムードに左右されることから、前衛選手は「他人が自分のプレーを見てアタックっぽいと感じるのはどんなとこか」という問いを立て、非アタック的アタック(ややこしい)の理想のフォームと球筋を追及する。
それだけではない。ミニバレーの真髄は「誰もいないスペースにポトリと落ちる球」であり、絶妙なフェイントプレーを決めた選手は「誰よりもコートを、そして世界を俯瞰できる人間」「体育館のツァラトゥストラ」として、観衆の尊敬を一身に集めることを許される。そのため、前衛選手はネット際でジャンプする時に、「非アタック的アタック」の要件を満たすであろう己がフォーム、そして相手プレイヤーの布陣を常に複眼で把握しながら、空中で最適な一手をシミュレーションして決断しなければならない。これは高度に知的な作業である。
ミニバレーボールを1試合終えた後に、あなたは気づくであろう。勝利に必要なのは、隆々とした筋肉でも派手なアタックでも回転レシーブでもなく、自分と他者との関係性をメタ認知できる複眼、現代社会において多様な他者と快適に共存できるような市民としての振る舞いであることを。そして、このスポーツが「勝利」という刹那的快楽ではなく、「成熟した市民の育成」という教育的な目的で設計されていることを・・・
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以上はすべて学務課コバヤシの私見というか妄想ですが、宮崎公立大学の一大行事である「スポーツデイ」が開催されました。「スポーツデイ」とは、開学以来、学生実行委員が主体となって企画運営し、学生と教職員が丸1日を費やして一心不乱にスポーツに没頭するイベントです。この日ばかりは学問のことは忘却の彼方に押しやられ、講義も休講となります。
学生は1年生から4年生まで、基礎ゼミや専門ゼミ、部やサークル、バイト先やアパートが同じである仲間など、6人から15人の単位でチームを編成します。教員は自分のゼミチームの指揮官兼プレイヤーとして参加します。職員は独自チームを結成し、若さに挑むのが恒例です。
競技内容はその年の実行委員が決定しますが、今年度は「5人6脚・10人11脚・15人16脚」、そして前述の「ミニバレーボール」の2競技が開催され、730人117チームがエントリーしました。
今週の花金は、そんなスポーツデイの1日をダイジェスト版でお送りします。
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AM 8:00
体育館駐車場では早朝から10人11脚を練習する学生の姿が。
AM 8:05
体育館の中では、学友会役員が何やら赤い布を敷いている。
壁にはずらりとトーナメント表。
そのトーナメント表の前で早くもやる気をみなぎらせる2名。
AM 8:25
学友会役員が集合し、ミーティングを開始。
体育部長進藤さん、体育部副部長の有村さんが簡潔かつ的確に指示を出す。
AM 8:30
体育館に大勢の学生が集まり始める。
AM 8:35
学友会長浦田君が「平成24年度スポーツデイを開始します!」と高らかに宣言。
学生代表猪野君による選手宣誓。
頑張る学生がいるところにチアの応援あり。平成23年度卒業生がプレゼントしてくれた業務用CDプレーヤーの活躍により、大音量でBGMが流れて迫力満点。
AM 9:00
スポーツデイ定例企画の「Tシャツコンテスト」。赤い布がレッドカーペットと化します。
1年生は真面目におそろいのTシャツを作り、上級生のはっちゃけかたを見て「ああ、ここボケるとこやったんですね」と気づく。これが伝統です。すべての団体をお見せできないのが非常に残念ですが、今年も腹がよじれるほど笑いました。
AM 9:30
怪我をしては元も子もないので、体操のお兄さんとラジオ体操。
AM 9:40
5人6脚開始・10人11脚・15人16脚開始!
PM 0:00
お昼休憩。のり弁とお茶が振る舞われます。
PM 1:15
ミニバレー開始!
運営サイドも大忙し!
審判お疲れ様です!
凌雲祭実行委員、局員募集中。広報機会を逃さないしたたかさ。
渋い表情で田中先生は何を思うのか・・・
CALL事務室新名さんを中心に結成された女性職員チーム、「絶対王政新名帝国」。
花金でおなじみヒライさんの豪快なサーブ。ちなみに「絶対王政新名帝国」の戦績は0勝2敗。2試合目は6点差を逆転されるまさかの展開で、精神面の脆さを露呈しました。
職員管理職で結成された重鎮チーム「ハイ・ブラッド・プレッシャーズ」から、就職支援室黒木室長のサーブ。健闘の結果、「礼儀正しかったで賞」に輝きました。
PM 5:30
すべての競技が終了し、後片付け。
立派に運営を成し遂げた学友会役員たち。達成感で目から汗が。本当にお疲れ様でした!
ちなみに私は男性職員で「昔はスポーツ得意やってんけどなあズ」を結成し、リーグトーナメント準決勝までコマを進めましたが、社会心理学専門演習の川瀬教授率いる「川瀬チルドレン」と熾烈な戦いを繰り広げ、川瀬教授の「君たち学生支援の意味わかってるよね?」という心理的圧迫、女性プレイヤーの堅実なレシーブ、長身中国人留学生の芸術的なまでの非アタック的アタックの前に力尽きました。
今週はこの辺で!!