6月上旬、学生食堂の掲示板がこのようなことに。
本学は学生イベントがとても多い大学です。新入生は入学直後に新入生歓迎会があり、部・サークル活動紹介イベントを経て約8~9割の新入生が何らかの課外活動団体に所属し、4月末にはスポーツデイ、5月には約7割の新入生が大学祭実行委員に所属し、7月には芸術祭、9月~10月の準備期間を経て11月に大学祭、12月にクリスマスコンサート、と息をつく暇もなく多忙な学生生活を送ります。
しかし、入学直後の新入生歓迎会を除いては、部・サークルや所属ゼミ、入学直後に形成された人間関係が参加単位となる行事です。大学生活の醍醐味のひとつは、「様々な価値観を持つ他者と関わり、相対比較の中で自分を知ること」にあります。本学の学生も、アルバイトやボランティアで地域住民と関わり、留学先で外国人と関わり、就職活動を通じて社会人と関わり、価値観の地図の中に自分を位置づけて理解していきます。外向き志向の積極性は素晴らしいことなのですが、「もっと大学内の新しい人間関係に目を向けてもいいんじゃないかな」と学務課コバヤシは感じていました。居心地の良い人間関係の中の当たり障りのないコミュニケーションだけに閉じこもるのではなく、「同じ大学に通っている」という大きなくくりの中で、今まで話したこともないような人間と突発的にゼロからコミュニケーションを構築していくような体験をしてほしいな、と。
ぼんやりそんなことを考えていた時、中国人の留学生から「もっと学内の日本人学生と交流したい」という要望を聞きました。そこで、本学の「日中文化交流促進会」というサークルの学生たちに相談したところ、学生交流イベントのアイデアが次々に生まれてきました。その第一弾が上記の「地元自慢タコパ」だったのです。
たこ焼きはあまり具材を選ばない料理で様々なアレンジが可能です。日本全国、そして外国から学生が集う本学の学生が、それぞれの出身地の食材を持ち寄り、たこ焼きを丸めるという作業を通じて人間関係を構築していくという、素敵なイベントの予感がしました。そして、あらゆる食材(個性)を包み込み、コミュニケーションのきっかけと美味しさを提供してくれる「たこ焼き」という料理の懐の深さ、さすがは人情の街大阪発祥の料理です。
タコパ当日、学生食堂にたこ焼き器を9台準備して、日中文化交流促進会のメンバーが下ごしらえを始めます。
たこ焼き器に油を敷くための道具を手作りする新垣さん
集合したメンバーの食材も予想通り個性豊か。その一部を紹介します。
チキン南蛮from宮﨑!
しらすfrom静岡!
さつま揚げfrom鹿児島、トマトピーマンfrom宮崎!
めんつゆfrom兵庫!
やたら辛いラー油from中国!
ツナ缶from韓国!
西紅柿炒蛋(卵とトマトを炒めたやつ)from中国!
地鶏from宮崎!
サーモンfrom北海道!
その他にも、蒟蒻、赤味噌、もずく、梅干し、納豆等々、バラエティー豊かな食材が揃いました。渡邊先生からはモーリタニア産のタコの差し入れをいただき、「そもそもモーリタニアってどこ?」ということで調べたり・・・
いよいよたこ焼きを焼いていきます。まずは油を万遍なく塗り、生地を穴の8分目まで注ぎます。じゅーっと音がするまでプレートを熱しておくことが望ましいです。具材をそれぞれの穴に投入した後、さらに穴からあふれ出るまで生地を注ぎ足します。しばらく加熱し表面にきつね色の焦げがついた頃合いで、穴のふちに竹串を刺して時計回りにくるっとたこ焼き全体を半回転させます。すると、地球の重力に引っ張られて半生の生地が穴に広がり、半球が球へと膨らみます。この際、穴の外に溢れた生地もすべて南半球に押し込みます。南半球もきつね色になったら完成です。
参加者がランダムに振り分けられたテーブルで、初対面同士の学生が自己紹介をしながら名刺シール交換し、あとはわいわい話しながらひたすらたこ焼きを焼き続けます。2度の席替えを経て、約10人のたこ焼き友達「タコパル」ができます。
9台のたこ焼き器がブレーカーを落としまくるというトラブルも乗り越え、無事に1000個のたこ焼きを焼いて胃袋に収めました。たこ焼きを共に焼いた「タコパル」共同体が組織された瞬間です。
たこ焼きは実に奥が深い食べ物です。焼き始めた時は、白い生地の海にごろごろと個性豊かな具材が転がっているだけで、「本当にこのドロドロの物体が丸い綺麗なたこ焼きになるのか?」と不安になります。しかし、加熱され、回転させられ、重力という自然の導きに翻弄されながら、たこ焼きはその姿を徐々に整形されてゆき、不完全な半球だったたこ焼きはやがて美しい球へと仕上がります。その姿は、不安定な青年期を右往左往四苦八苦しながら過ごし、半人前から一人前に成長して卒業していく若者の姿を彷彿とさせます。なんとメタフォリカルな料理でしょうか。さあ皆さんも、今夜は仲間・家族とたこ焼きを!
以上、一緒にたこ焼きを焼くと非常に面倒くさい男、学務課コバヤシがお送りしました。