2011年2月10日 第75号 『社会人大学生の卒業』

★今週は金曜日が祝日のため、特別に“ハナモク”でお送りします★

 

みなさん、こんにちは。

宮崎では、ここのところ鳥インフルエンザや新燃岳の噴火が相次いで発生し、

心を痛める日々が続いております。

本学は宮崎市内の中心に位置していますので

風向きによって灰が降ってくる、といった具合で

テレビ等で報道されているほどの大きな被害は現在のところ受けておりません。

しかし、

学内に消毒用のマットが設置されたり、

学生の乗った電車の運行が遅れて試験に間に合わなかったり・・・

といったことを見聞きすると、やはりそれらのことを考えずにはいられない毎日です。

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火山灰?風邪?・・・原因不明のガラガラ声に悩まされる   ツエさん

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、事務局では間近に迫った入試や卒業式の準備をひたすらに進めております。

 

・・・で、卒業と言えば、

最近のハナキンでも“卒論提出日”や“卒論発表会”の様子がレポートされたのは

記憶に新しいところです。

今回はそれらを見事クリアして

この春にめでたく卒業を迎える予定の徳重久美子さんをご紹介します。

 

徳重さんは、4年前の春、社会人特別選抜試験に合格し入学してきました。

その当時、定年退職まであと1年を残しての新たなスタートでした。

 

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※写真は今年度の入学式の様子です。

  

そんな徳重さんに、学生生活を振り返ってのお話を聞かせていただきました。

(残念ながら、顔写真は恥ずかしい・・・とのことでした。)

 

Q.なぜ大学に入学しようと思ったのですか?

A.長年、仕事(管理栄養士)と親の介護をする生活を続けてきたので、気分転換を求めていました。また、以前から母に『これからは英語の時代だよ』と言われていたこともあり、できるところまででいいから英語が勉強できればと思って公立大を選びました。

 

Q.入学試験はどうでしたか? 試験に向けての勉強はどうやってされたのですか?

A.入学試験は英語が難しかったという記憶があります。でも、受験の3~4年前から英字新聞を読んだりラジオ講座を聞いたりしながら独学で英語の勉強をしていましたので特に受験勉強をしたわけではありません。それにしても、まさか一度の受験で合格するとは思ってもいませんでした。(笑)

 

Q.合格通知を受け取ったときの気分は?

A.「仕事をやめて入学しよう!」と決心しました。

 

Q.入学前、楽しみにしていたことは? 実際に入学してどうでしたか?

A.自分の興味・関心に基づいて学ぶことを楽しみにしていました。宮崎公立大学はリベラルアーツでいろんな分野の学問が学べますので、その点はとても恵まれていました。

 

Q.学生生活で大変だったと思うことは?

A.入学当初は、自分より歳の若い人たちにカリキュラムのことなどを聞くことができずに、つまずいた時は一人で悩んだりすることもありました。もちろん今では、そんなこともなくなりましたがその当時はなんとなく構えてしまっていました。そんな時、先輩の社会人学生が相談に乗ってくれてとても助かりました。

 

Q.今のゼミを選んだ理由は?

A.元々、「できるところまで」と思って入学しましたので、英語がある程度勉強できればいいかなと考えていました。しかし、英語以外の分野を勉強する過程で体系的に知識を積み上げることの重要さに気付き、頑張ってゼミ(専門演習)も履修しようと決意しました。いくつか興味のあったゼミの面接を受けた中で阪本准教授(大衆文化・出版文化論演習)が社会人学生の私を歓迎してくださったこともあり、そこに決めました。

 

Q.ゼミ活動・卒業論文をやり終えた感想をお聞かせください。

A.先生の高い識見に接することや他のゼミ生のみなさんの卒論作成の過程から多くのことを学ぶことができました。自分の卒論(『「日本型食生活」と「日本食」―近現代日本の食生活を通した〈望ましい食生活〉の展望―』)に関しては、先生に多くのことを導いていただき感謝しています。

 

Q.4年間の大学生活をひと言で表すと?

A.「自分と向き合う4年間」でした。レポートや試験の出来が悪かったときなどはつらかったですが(笑)、足りないところをさらけだすことで自分が成長できたと思います。

 

Q.徳重さんにとって「学び」とは?

A.社会は日々変化していきます。現代のような情報化社会で生きるには、仕事をしている・していないに関わらず社会人として正しい判断力を身に付けることが必要です。多くの人と接することと同じように「学ぶ」ことは自分を助けてくれるものである、と確信しています。

 

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徳重さんの卒業論文発表会用レジュメ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今回なぜ徳重さんにお話をお伺いしたかったかというと、

かつてふと目にした光景がとても印象に残っていたからです。

 

4年前の入学直後、徳重さんは

「英語の授業についていくのが大変だ」

とうつむきながら学務課のカウンターに相談に来ていました。

 

入学試験をパスしたとは言え、

高校を卒業したばかりの若者たちに混じって週に何時間も英語の授業を受け課題をこなすのは

おそらく私たちの想像以上にハードだったろうと思います。

おまけに本学は、英語のみならず情報の授業までもが必修科目として存在します。

前職でパソコンは使っていたそうですが、ワードが苦手だった徳重さん。

英語と格闘しながらパソコンとにらめっこする日々。

 

 

普段の徳重さんは、どんなときもやさしい笑顔で挨拶をしてくれる学生さんでしたから、

その笑顔の裏に隠された努力を思うと本当に頭が下がります。

 

大変なこともたくさんあったと思いますがそれでも頑張ってこられたのは、

事務局職員(特に情報事務室・CALL事務室にお世話になったそうです)や売店のスタッフなど

いろいろなところで声をかけてくれる人たちがいたことと、

何よりも「学ぶ」ことの大切さに気付けたからだと話してくれました。

 

そんな徳重さんも4年間でしっかりと規定の単位を修得し、このたび、無事に卒業を迎えます。

 

 

卒業を前に、ゼミの指導教員であり卒業論文を担当された阪本准教授に

徳重さんに対するコメントをいただきました。 

『徳重さんは管理栄養士として学校に勤務されていたご経験があり、その立場から、近現代日本の食文化の歴史を主に人文科学的な見地から探究されていました。その姿勢はたいへん熱心で、かなりの数(3年生ぐらいのときには、すでに50~60冊お読みになられていた記憶があります)の文献を読み込まれ、A4で28枚の卒論におまとめになられました。本学の卒論のフォーマットは40字×40行なので、単純計算して400字詰め原稿用紙100枚を超える量になります。

 また勉強だけでなく、同じゼミの学生ともたいへん親しくされていました。3年生の学園祭のときには、徳重さんが考案されたレシピの料理を学生たちがつくり販売していました。

 私はこれまでゼミで社会人の方をお二人受け入れてきました。社会人の方は徳重さんのようにそれまで歩いてこられた道を学問的に検証しようとされたり、ご自身のご関心を深く掘り下げていこうとするご姿勢が非常に強いと感じます。 

 そうした学習姿勢は他の学生にも学問に対する姿勢においてよい影響をもたらしています。(年の離れた方と一緒に学ぶ経験は高校までの学校生活にはなかったのではないかと思います。それに対し、熱心な社会人の方と共に大学で学ぶことは、学問が誰に対しても開かれているということを実体験として経験するだけでなく、その姿勢を目にしたり、その方の研究発表や、バックグラウンド、人生経験からの重みを伴った発言を耳にするわけですから、そうした方とゼミで学びあえる経験は貴重だと思います)。

 とくに徳重さんの真摯に取り組まれるお姿からは、私自身もたいへん啓発を受けました。』

 

 

ある程度大人になってしまうと

 

もう年だから・・・とか

今は忙しくて・・・とか

いまさら・・・・・・・とか

 

やらない理由を見つけてしまいがちですが(と、我が身を反省・・・)、

新しいことに挑戦すること、一生懸命であること、

なによりも「やってみよう!」という気持ちを大事にすることの素晴らしさを

徳重さんを通して改めて感じさせられました。

 

何かを始めなければ何も得られない、ということですね。

 

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満開を待つ桜の木・・・春はまだまだ?

  

 

  

 

 

 

 

 

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おっ!つぼみだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

この春、宮崎公立大学ではおよそ200名の学生が新しい道へと旅立ちます。

(卒業式の様子は、3月のハナキンでお楽しみいただける・・・のでは。)